2010年5月22日土曜日

GAE for Business



 Google Apps Engineで新しいサービスがアナウンスされた。


Google Apps Engine for Business





 Google Apss Engineのエンタープライズ向けのサービスである。下記のサイトでロードマップが提示されている。


Google Apps Engine for Business Roadmap


 変更内容はたくさんある。技術的な観点で言えば以下の2点はこれまでビジネス利用ではネックとされていただけに非常に大きなポイントだ。




  • SQLデータベースのサポート

  • 独自ドメインSSLの実装


 GAEがこれら2つをサポートすることで、ビジネス用サービスとしても非常に強力なプラットフォームとなる。(ロードマップで上記2つは年内プレビューリリース予定となっている)


 その他にも以下のような内容が予定されている。




  • 集中管理サイトの提供

  • 価格帯の変更


 集中管理サイトでは、管理下にあるアプリを一括管理できるインターフェースが提供され、認証などの設定が行えるようになる(こちらはプレビューリリースされた)。また、これまでは各アプリごとにDNSの設定が必須だったが、これらをサブドメインで一括管理するなどの機能が提供されている。


 価格体系は以下のようになる。



Each application costs $8 per user, up to a maximum of $1000, per month.


各アプリごとに、$1,000(約10万)を上限として各ユーザーあたり月額8$。



 つまりGAE for Businessでは従量制ではなく、ユーザー単位のコストで決定される。これにより、GAE for Businessでは、GoogleApps Permium Editionと同様SLAで99.9%の動作保証を付けている。価格もユーザー単位で計算しやすく、SLAもつけている点でビジネス的には利用はしやすいだろう。これまでのGAEは利用予測が難しいコンシューマー向け、企業向けサービスはFor Businessというすみわけを狙っていると思われる。


 また、GAEのSDKも1.3.4へバージョンアップしており、OpenID及びOAuthによる認証のサポートがExperimentalながらサポートされるようになった。これにより認証設定が柔軟になり、GAEの適用範囲が広がったと言える。(Google Apps Marketplace対応もかなり楽になると思われる)


 今回のアナウンスで、Googleは本気でGAEをビジネスプラットフォームとして位置づけるという戦略が伺える。独自ドメインSSLやSQLDBのサポートなど、ユーザーの声を拾い上げてウィークポイントを確実に埋めつつある。マネタイズで頭を悩ますコンシューマー向けと違い、ビジネス向けはビッグマーケットだ。Google Marketplaceの動向もあわせてGoogle For Businessの動向は注目だ。





2010年5月21日金曜日

Google Storage



 今週はGoogle IOが開催されていることもあり、Google関連のリリースが目白押しだ。


Google Apps Engine for Business等の他にも気になるサービスがリリースされた。


Google Storage


 現在Labの位置づけではあるが、RESTfulなインターフェースをもつGoogleのストレージサービスである。そう、Google版S3である。


 Google Apps EngineではBlobSotreの取り扱いの制約がきついため、大きなデータを取り扱うアプリには他のサービスとの連携が必要であった。このサービスを利用すればEC2+S3のようなシステムがGAE+Google Storageで実現できるようになることを戦略的に考えていると思われる。


 Storageとはいっても一般的なファイルシステムでいうネストした構造はサポートしていないようで、Bucket(バケット、バケツのこと)と呼ばれるコンテナ単位でデータを取り扱う。これはApps Engine同様、スケールアウトのしやすさを設計ポリシーとしているためだろう。


GooglePythonベースのコマンドラインツールGSUtilのほか、Webアプリベースの管理ツール「Google Storage Manager」が提供されている。


サービス自体はこれからという感じだが、Google Apps Engineの開発に携わる人にはうれしい機能だ。





2010年5月17日月曜日

クラウドエキスポ



今月12日から14日まで東京ビックサイトで開催されたクラウドEXPOへいってきた。


参加企業も来場者も多く、早々と秋の第2回目が決定したようである。やはり「クラウド」というキーワードは勢いがついており、ようやく日本でもビジネスレベルでのクラウドが始まるなという感じであった。


その反面、クラウドという言葉が非常にあいまいな定義であると同時に、サービス化が進んでいる英語圏とではだいぶ開きがあるという日本の実情も垣間見えた。


何をもってクラウドとするかといえば次々と言葉が出てくる。「仮想化」「伸縮性」「所有から利用へ」等など。しかし、「ASPと何がちがうの?」といわれると、言葉が少なくなる。既存のサービスで、「データの保存先にAmazonが選べるようになりました」といわれても、正直困る。


「所有から利用へ」というフレーズはASPの時代のまんまなのでそのままにしておくが、「仮想化」がクラウドだといわれると、何かひっかかる。本当に仮想化がクラウドの本質なのかと。


確かに、仮想化はクラウドの中核技術である。それによってもたらされるコストカットもユーザーの最大の関心事だ。しかし、コストカットは仮想化によってもたらされたというよりも、技術的な部分も含めて「企業努力」の賜物だ。別に仮想化でなくてもできる。要は仮想化が「サービス提供側の理屈」に聞こえるのだ。





質問を変えよう。「ASPではできなかったことは何か?」





やはり大規模なインフラと仮想化を駆使した「伸縮性」だと考える。特にコンシューマー向けのソリューションはアクセスの予測が難しい。アクセスが増えれば仮想化を使ってスムーズにリソースを伸縮し、莫大な初期投資をかけずとも、従量制の料金でサービスが開始できるという点では利用者側のメリットも大きい。


EXPOでIaaSのサービスを提供している企業をいくつか回ったが、EC2のような自動でリソースを伸縮するようなサービスを提供している企業は皆無だった。コストカットはもちろん、機器の調達が要らない、数分でホストを追加できる等、仮想化のメリットはあるにせよ、その追加自体が手動ということはアクセスの状況に注視し続けなければ対応できない。


よく、クラウドを3つのレイヤーに分ける。英語圏では既にそれぞれのレイヤーに巨人がいる。SaaSでは、Google Apps、Office Live、SalesForce等、PaaSではGoogle Apps Engine、Azure、IaaSではAmazonなど等。「仮想化」だけではとても太刀打ちできそうにない。仮想化とコストカットだけに安易に向かうと、自らの首をしめるような結果にならないか。


クラウドはまだこれからだ。その「成長ののりしろ」もたくさんある。クラウドと称した「安価な専用サーバー」も有効なソリューションのひとつではあるが、「クラウドらしさ」を活用した次のステップが重要だと感じさせられた。